Column/Interview コラム・インタビュー

2026.02.16 コラム

欧米・豪を意識したインバウンド対策|高付加価値化を実現し「選ばれる地域」を目指す

かつてないほどの盛り上がりを見せるインバウンド市場。

日本を訪れる人々は年々増え続け、経済的な恩恵も過去に類を見ない規模へと拡大しています。

訪日客の数は中国や韓国などのアジア圏が中心ですが、近年欧米・豪からのインバウンド対策を重視する動きが広がっています。

本記事では、欧米豪市場をターゲットに見据え、地域の魅力を「高付加価値」な体験として磨き上げるための方法をお伝えします。

観光地の高付加価値化とは?

観光地の高付加価値化とは、具体的にどのようなことを指すのでしょうか。

一言でいえば、旅行者の満足度を上げられるように提供価値を高めることです。

観光地としての価値が高まりブランド力が磨かれれば、世界中の旅行者に「行ってみたい」と思われる場所になるという好循環が生まれます。

観光庁は地域経済を活性化させ、文化や伝統を未来へ継承するという「観光の本質」を共に創り上げる人々をこれからのインバウンド戦略における重要なパートナーとして位置付けています。

観光地の高付加価値化が進めば、結果として地域の雇用環境の改善や所得の向上にもつながることでしょう。

欧米・豪からのインバウンド市場の現状

欧米・豪からのインバウンド市場はどのように推移しているのでしょうか。

訪日外国人による総消費額では依然として中国が高いシェアを占めていますが、近年の市場全体の成長を支えているのがアメリカ、ヨーロッパ、オーストラリアを中心とした欧米豪市場です。

欧米豪諸国からの旅行者の特徴は、アジア圏と比較して滞在期間中の一人あたりの消費額が高い点です。

アジア諸国からの旅行者が買い物などの「モノ消費」を主な目的とする傾向がある一方で、欧米豪からの旅行者は上質な宿泊体験やその土地ならではの文化体験といった「コト消費」に重点を置きます。

そのため、幅広い分野に対して消費を行い、結果として高い消費単価につながっています。

また、欧米豪の旅行者は地方への関心が高く、まだ広く知られていない地域の文化や自然を求めて地方に足を運ぶ傾向があります。

歴史的な街並みが残る地方都市などでは、宿泊客の多くを欧米の旅行者が占める例も少なくありません。

このように、欧米豪市場は日本の地方経済を活性化させ、持続可能な観光地づくりを支える可能性を秘めています。

高付加価値化によって選ばれる地域になるために

高付加価値化によって選ばれる地域になるために必要なことはどんなことでしょうか。

観光庁のアクションプランでは、高付加価値化に必要な要素を「ウリ」「ヤド」「ヒト」「コネ」と4つの観点から整理しています。

ウリ

「ウリ」とは、その地域ならではの魅力、つまり「ここに来る理由」となる独自性のことです。

例えば、京都なら伝統文化と職人技、北海道なら雄大な自然と食、石川なら武家文化と伝統工芸といったように各地域が持つ特色があります。

目に見える資産(アート作品、建築物、食文化など)と、目に見えない資産(歴史、自然環境、地域に伝わる物語など)を組み合わせて他では体験できない独自の価値を作り出せます。

そして「なぜその景色が生まれたのか」「どんな歴史があるのか」といったストーリーを加えることで訪問する理由が生まれ、滞在の価値が高まります。

ヤド

「ヤド」とは、地域の文化や魅力を深く体験できる拠点となる宿泊施設のことです。

高付加価値な宿とは、必ずしも豪華な設備や高級ブランドのアメニティを揃えることではありません。

大切なのは、建物の設計、提供する食事、スタッフの接客など、あらゆる要素に地域らしさを織り込むことです。

例えば、地元の木材や伝統的な建築技法を用いた客室、その土地で採れた食材を使った郷土料理、地域の歴史や文化を熟知したスタッフによるおもてなしなどです。

地域ならではの体験を通じて、旅行者は宿泊費に見合った、あるいはそれ以上の価値を感じることができます。

ヒト

「ヒト」とは、高付加価値な観光を実現するために欠かせない人材のことです。

例えば、現地で旅行者を案内するガイドが挙げられます。

観光スポットを紹介するときに歴史的背景、文化的な意味なども合わせて伝えられれば、旅行者の満足度は高まります。

言語対応ができることは前提として、旅行者の期待を超える体験を提供する力が求められています。

コネ

「コネ」とは、海外の高付加価値層とのネットワークや効果的な情報発信を意味します。

欧米豪の富裕層にリーチするためには、彼らが普段利用する情報収集チャネルを理解し、適切にアプローチする必要があります。

トリップアドバイザーやGoogleレビューなどの口コミサイトで高い評価を獲得することは、欧米豪市場へのアプローチにおいて極めて重要です。

一般的な観光情報サイトよりも、口コミサイトや信頼できる旅行会社からの推薦を重視する傾向があるためです。

また、富裕層旅行者に対して強い影響力を持つ海外の旅行会社との関係構築も不可欠といえるでしょう。

高付加価値体験の例

出典:JNTO|日本政府観光局

金沢市観光協会が提供する「金沢一期一会」は、高付加価値体験として優れた事例です。

金沢は加賀友禅や大樋焼、金沢箔など26業種の伝統工芸が受け継がれている日本でも有数の伝統工芸が有名な都市です。

旅行者はあらかじめ予約していた作家の工房を訪れ、製作の様子や工程の説明などを体験できます。

金沢一期一会では、以下6種類の訪問先を用意しています。(2026年2月時点)

  • 大樋焼 / 十一代 大樋長左衛門
  • 加賀友禅 / 毎田健治・仁嗣
  • 金沢漆器・加賀蒔絵 / 西村松逸
  • 加賀繡 / 宮越仁美
  • 漆工 / 杉田明彦
  • 【老舗漆器店】店主自宅訪問

体験時間は1時間から1時間半程度で、工房やギャラリーを見学しながら、作家本人から話を聞くことができます。

工房のスペースや作家の製作活動に配慮し、少人数での受け入れを基本としています。

参加者には、自身もアーティストとして活動している人や、芸術に深い関心を持つ人が多いようです。

また、この取り組みは旅行者だけでなく、作家側にとってもメリットがあります。

体験の場で作品が購入されたり、予約されたりするケースもあり、双方にとって価値のある機会となっています。

受け入れ環境の整備

欧米豪からの観光客を迎えるためには、ハードとソフトの両面から環境整備する必要があります。

せっかく魅力的なコンテンツがあっても、基盤が整っていなければ満足度を高めることはできません。

多言語対応

まずは多言語対応です。

ここで観光庁が2025年に訪日観光客に対して行ったアンケートを見てみましょう。

観光の際に困った場所がなかったかを聞いた結果、以下のようになっています。

「観光スポット、観光案内所」(都市部:62%、地方部:42%)との回答が多く、困った要因として「混雑や渋滞等の情報が発信されていない・情報量が不足」(都市部・地方部とも41%)との回答が多い結果となった。

出典:観光庁|訪日外国人旅行者の受入環境に関する調査を実施しました

このことから、観光地で配布されるパンフレットや案内表示の多言語化を進める必要があることが分かります。

決済環境

キャッシュレス決済への対応も欠かせません。

欧米豪に限ったことではありませんが、海外からの旅行者は現金をあまり持ち歩かず、クレジットカードでの支払いを好む傾向があります。

機会損失を防ぐために、少なくとも主要なクレジットカードブランドには対応しておくべきでしょう。

特に体験プログラムや工芸品の購入など単価の高い商品を扱う場合、決済環境の整備は重要です。

また、現地での決済だけでなくオンラインでの予約・決済システムを導入し、予約から支払いまでのプロセスを円滑にすることも効果的です。

Wi-Fi環境

通信インフラの整備も重要です。

観光地の情報収集、SNSでの発信、家族や友人との連絡などにインターネットを活用します。

主要な観光施設や観光案内所、飲食店などでWi-Fi環境を提供することで旅行者の利便性が向上します。

サステナビリティへの配慮

欧米豪の旅行者は、環境や社会への配慮に対する意識が高い傾向があります。

地域の環境保全活動、伝統文化の継承への取り組み、地域住民との共生といった姿勢を示すことが重要です。

こうした取り組みを積極的に発信することで、価値観を共有する旅行者からの支持を得られるでしょう。

オーバーツーリズム対策

持続可能な観光地づくりのためには、オーバーツーリズム対策も必要です。

観光客の急増によって地域住民の生活環境が脅かされることのないように受け入れ人数の適切な管理や、地域への配慮を促す情報発信が求められます。

まとめ

欧米豪からの旅行者は、1人当たりの消費単価が高く、地方訪問への関心も強いという特徴を持っています。

今後、欧米豪市場を取り込むためには、高付加価値化がキーワードになってくるでしょう。

観光庁が示す「ウリ」「ヤド」「ヒト」「コネ」4つの要素を総合的に強化し、地域固有の価値を体験できる高付加価値化を目指しましょう。

おすすめ記事 Recommend

PAGE TOP