Interview インタビュー

2025.02.09 インタビュー

実体験から学ぶ!日本の商品を世界へ広げる海外ビジネス戦略

日本の商品を世界へ、アウトバウンド編

2023年以降、日本・アメリカ・中国の3か国間における越境EC市場は成長を続けており、アメリカ事業者や中国消費者による日本事業者からの越境EC購入額は、年間2兆円を越えています。日本のEC事業者にとって海外ユーザーの獲得は成功に欠かせないものですが、日本の商品を世界へ売り出すために大切なことは何でしょうか。

今回は、台湾・香港・タイ・シンガポール・オーストラリアなど12か国でB to B事業を展開し、日本商材の卸・輸出販売に長年取り組んでいる、エスビージャパン株式会社の中元社長へお話を伺いました。

 

■海外進出を始めた経緯について

-どのような事業で海外進出をされたのでしょうか?
2020年、日本の観光プロモーション運用を目的に台湾へ進出し、「JAPAN SAKURA BASE」という日本のアンテナショップを設立しました。

その後、店舗をベトナム・インドネシアにも展開して日本の商品を世界に発信していましたが、現在は店舗をたたみ、その経験をもとに世界12か国のバイヤーへ、日本の商品や自治体の特産品を卸す事業を展開しています。

2025年1月20日には「JAPAN SAKURA BASE」の名前で越境ECサイトを立ち上げ、世界70か国の一般消費者向けに、日本の食品や雑貨、アパレル、アクセサリーキャラクター商品などの販売を開始しました。

人生初の店舗ビジネスはなんと海外で 台湾で経営したJAPAN SAKURA BASE

 

-海外進出を決意されたきっかけや背景について教えてください。
私は事業を本格的に立ち上げる前にSARSを経験していたので、コロナもいずれ収束することはわかっていました。

そのため、当時はコロナの流行によって撤退する企業の話を多く聞いていましたが、「コロナ収束後も海外事業を続けられる位置にいたい!」という強い思いから、あえてコロナ全盛期のタイミングで海外進出を決めました。

 

-初めての海外進出に挑戦されたとき、特に大変だったことは何ですか?
コロナ全盛期に海外進出したことで、ビザの取得に苦労しました。

また、当時は国を移動するとコロナの検査などで数日~数週間隔離されていたので、スムーズに仕事を進められない点も大変でした。

 

■現地のニーズのくみ取り方について

-現地の消費者や取引先とのコミュニケーションを通じて、どのようなニーズを感じましたか?
海外進出前にセミナーなどで外国の方の考え方や趣向などを学んでいましたが、実際に現地の消費者や取引先とコミュニケーションをとってみると、東アジア以外の地域では日本のことをあまり把握していないことがわかりました。

日本から近い国でも「日本=寿司・東京・京都」程度の理解度だったので、東アジア以外の地域に対しては、日本文化を広げるニーズが十分にあると感じました。

ツバルでのビジネス移動 百聞は一見に如かずで世界中へ訪問

 

-「日本らしさ」をアピールするために意識していることがあれば教えてください。
そもそも海外では日本文化の認知度が低いことから、日本で流行が終わった商品や、あまり目にしなくなった商品でも十分、日本らしさをアピールできるベース商品になると考えています。具体的には、日本の酒やフルーツなどの食品関係、アニメなどのカルチャー商品が挙げられますね。

また、ある程度日本文化が浸透している国であれば、セカンドステージとして、日本文化を各国風にアレンジして提供するのも良いアピール方法だと考えています。

海外に大吟醸などの日本酒を売りに出す会社は多いですが、実は海外で日本酒を飲む方は少ないです。また、現在は世界的にモクテルやローアルコールがブームになっているので、私が海外で日本のお酒を売るのであれば、クラフトビールのような見せ方で「どぶろく」を売り出したいと思っています。

 

■海外で商品を売る際の価格戦略について

-各国での価格設定を決める際に、どのような基準や考え方を重視していますか?
商品の価格は為替や売りたい値段を基準にするのではなく、現地の時給を基準にして設定しています。

日本企業は海外向けに商品価格を単に2倍にするなど、安易に設定しているところも多いですが、この場合、あとから修正できず失敗したり、機会損失を出したりするケースが多いです。

しかし、現地の時給をベースに、ディナーやランチの価格を調査して各国の購買力を把握すると、現地民も無理なく購入できる価格設定になるため、機会損出を出すリスクを軽減できます。また、時給ベースで算出した価格設定で採算が合わない商品は、事前に海外進出を見合わす判断を下せるので、失敗しにくいです。

 

-為替レートが影響する中で、価格戦略で苦労したことがあれば教えてください。
東アジアで商材の単価を出せない点が苦労しているポイントですね。

東アジアではソーシャルバイヤーが活躍しているため、日本の商品価格を知っている人が多いです。そのため、日本から近い国で価格設定を上げすぎると他国企業に負けてしまいます。

海外進出は日本製品を取り扱う日本企業がライバルになると思われがちですが、東アジアの場合、実は日本の商品価格を把握している他国企業がライバルになる可能性が高いので、価格設定はより慎重に行います。

シリコンバレー Meta本社にて

 

ライバルは日系企業だけじゃない。中国台湾韓国ほか、各国ローカル企業も競合

 

■海外ビジネスで感じた苦労と気づき

-海外の取引先とやり取りする中で、日本と海外のビジネスの進め方について、違いを感じたことはありますか?
スピード感がまったく異なります。

日本の商談は、リスクを回避するために一度持ち帰ったり、上の判断を待ったりして後日結果を伝えるケースが多いので、その場でまとまることはほぼありません。しかし、中国や台湾企業は資金力が大きいため、その場で決断を下す企業が多いです。

日本は返事が遅いことから、海外ビジネスでは嫌がられる傾向にあります。判断の先延ばしは海外ビジネスだとリスクにしかならないので、返事の早さは日本と海外ビジネスの進め方で大きな違いだと感じました。

 

-失敗やリスクを乗り越えながら進めるために、どのような姿勢を心がけていますか?
事前準備を怠らないようにしています。

渡航前に国について調べておくのはもちろん、使える資金や価格設定なども考えておき、現地へ行ったらとにかくライバルより早く回答できるよう心がけています。

ハンガリーのビジネスパートナー とにかく海外はスピードが重要

 

-実店舗を経営してみて、新たに気づいたことや学んだことがあれば教えてください。
海外ビジネスはリスクや失敗が大切な財産になるので、許容できる失敗や金額、量、撤退基準をある程度決めておき、その範囲内なら即決に近いスピード感で動くことが大切だと学びました。

過去に急な法改正により、インドネシアの税関を商品が通過できなくなったときは損失を生みましたが、失敗しても良い金額で事業を進めていたので、そこまで大きな痛手にはなりませんでした。

 

-現地の方々からアドバイスを受ける中で、「意外だった」と感じたことはありますか?
現地の方々から「最初から大きく成功しようと思わない方がいい」と言われました。日本だと、ビジネスを成功させるために完璧を求めがちですが、海外では少しずつ進めながら着実にステップアップしていくことが重要だということを教わりました。

中米7ヵ国をTICA BUSで国境縦断 ローカルの感性を体感することで感じる

 

今後の展望について

-今後、日本の商品を海外で展開するにあたって、どのようなアプローチが必要だと考えていますか?

ただ商品を海外企業に卸すのではなく、配送方法や現地のプロモーション方法など、相手の国に入り込み、一緒にパートナーとしてやっていくアプローチが必要だと考えています。

海外では他国が日本の商品を使用して営業しているケースが多いので、海外ビジネスのライバルは日本企業ではなく、台湾・韓国・中国などの海外企業であることが多いです。

そのため、日本の商品を海外で展開するためには、失敗を恐れず、積極的に他国企業より早く展開していきたいです。

オーストラリア・シドニーで日本のTOY商品を商談する

 

■最後に、これから海外進出を目指す人たちに向けて、メッセージをお願いします。

海外ビジネスはとにかくスピード重視なので、小さな失敗は気にせず、とにかく動いてみてください。失敗や経験は大きな財産になるので、ある程度のラインを決めたらどんどんチャレンジしていきましょう。

ただし、海外へ進出するなら最低限の英語力は必要です。コミュニケーションは英語でとれるよう、下手でも良いので、マナーとしてある程度の英語は話せるようにしておきましょう。

 

また、海外ビジネスの場では会社単位でなく、1人の人間として見られるため、自分は何をできる人物なのか、一個人としての考えや判断できることは何なのか、はっきり伝えられるようにしておくことも大切です。

 

日本の商品を海外展開する際は、日本企業ではなく、海外企業がライバルになるケースもあります。例えば、ベトナムの日本雑貨チェーン「Tokyo Life」、オーストラリアの寿司チェーン「one sushi」、イギリスのアパレル「Superdry」などのように、世界には日本の商品や文化を使用している企業が多く存在しているので、日本の商品を海外で展開するためには、グローバルな視野でライバル企業を把握することも大切です。

 

キューバでビジネスオーナーたちとの別れ

 

首長族の村を訪問 なんでも経験したいです

 

タイでは象使いのライセンスを取得(笑)

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